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[最近の皮膚若返り治療の変貌―若返り治療入門]

東京女子医大付属青山女性医療研究所 元教授 若松信吾

■ はじめに

4−5年前から、全世界的に美容医療が盛んに行われるようになってきました。機器の進歩により誰でも簡単にさほどのトレーニングも必要とせずに施術を行うことができ、相当な好結果が得られるようになり、しかも相当に高額な収入が期待できるようになったことと、治療後の腫脹、あざなどいわゆるdown timeと呼ばれる、治癒までの期間が極端に短縮されたことにあります。患者さんの側から考えても、かかる費用と我慢すべき治癒までの期間それに我慢の度合いが、治療によって得られる効果に見合ってきたということになります。以前には美容医療をもっぱら扱っているのは美容外科医のみでしたが、治療の簡便さと後遺症に巻き込まれる恐れが少なくなってきたことから、最近では、皮膚科医をはじめとして、美容とは全く関係のない他科の医師の参入がすすみ、更に株式会社の美容医療への参入が認められるなどの動きが早まって大競争時代の始まりの観を呈してきました。一方、従来の美容外科医は、手術の方がskillを要することや、その達成感を忘れられずに手術にこだわっていたために、最近のnoninvasiveな治療法に客を奪われてしまい、遅まきながら最新の治療法を取り入れつつあるというのが現状です。しかし多様な治療機器を取り揃えて、お客のニーズに応える必要があるいっぽう、機器が相当な高額であることから、その支払いと集客法にはこれまで以上に知恵を絞る必要があります。

■ これから美容医療をはじめてみようとされる先生方の最新の知識仕入れ法

一般の患者さんが知識を仕入れる方法は、女性雑誌、インターネットなどが主です。そこで世の中のニーズと傾向を知るために、こちらを研究しノートにでもまとめてみることをお勧めします。また学会では(ホームページで検索する):日本レーザー医学会、日本レーザー治療学会、美容外科学会、美容皮膚科学会、形成外科学会、メディカル・ビューティー・フォーラム、日本美容医療協会主催の講習会など、その他各機器輸入会社主催の講習会などがあります。現在使用されている最新の美容治療機器は殆んどアメリカなどの外国製で日本製には見るべきものがありません。また、機器の進歩が早く、白物家電並みで半年に一つは新しい機種が出現し、各医療機関はいかに早くそれを取り入れて、広告し集客するかというのが一つの手法として定着しつつあり、息を抜けない状況です。その点老齢の先生方にはついていけないという反発と美容医療に対する反感にまでなっている観があります。

■ 美容医療の治療法の数々

一般のニーズが高く参入しやすいものから順に、

  1. 1. レーザー脱毛
    女性全員が対象です。副作用も少なく、効果が高い。ルミナス社のダイオードレーザーが代表的。その他の方法;部分絶縁針による電気脱毛。厚生労働省より、脱毛は医療機関でのみ行うべきものと通達されている。
    参照:日本医学脱毛学会 
  2. 2. IPL(Intensive Pulsed Light)
    カメラのフラッシュを強力にしたものを発光させ、必要な波長をフィルターで取り出し皮膚面に照射する機械。レーザーと比較するとエネルギーが低いので著効性はないが、downtimeなしに徐々に効果が現れるので、患者さんへの人気が高い。毎月一回、5〜10回治療を行うと相当な効果がでることが多い。主な効果としては、シミ等の色素沈着の軽減、肌のくすみの軽減、肌の張り、つやの改善、小じわの改善などがあり、レーザーやケミカルピーリングなどでは得られない効果がでる。lumenus社の装置が草分けであるが、現在では20社以上から製品がでている。
  3. 3. レーザー、各種
    レーザー装置の性能についての留意点は、発振波長、パルス幅、最大スポットサイズ、最大出力である。皮膚に対する作用がそれぞれ異なる。
    有用なレーザーとしては、
    色素レーザー:576nm付近を発振し20〜30msの長いパルス幅を有し、皮膚冷却装置がついているもの。
    Q-スイッチルビー、Q-スイッチアレキサンドライト、Q-スイッチYAGの各レーザー:Q-スイッチがついているものは、パルス幅は15〜25nsでどれも同じ、波長が若干異なることにより作用も少し違うが、初心者の方は同じと考えたほうが早い。主として、IPL等で取れにくいシミの追加タッチアップ用として使用している。以前はいきなりレーザー照射でシミを除去していたが、施術後の炎症後色素沈着が長い場合には約1年間も持続するために、元のシミよりももっと黒く目立つようになったとの苦情が絶えなかった。そのようなdowntimeのなさがIPLが患者さんに人気を博した理由である。IPL治療を3〜4回行うとメラニン細胞の活動が抑制されてくる(melanocytoのtaming (飼いならされ)効果と名づけている)のでその後、レーザー治療を行うようにすると生じる色素沈着は大分軽度となり、何とか我慢できる。
    炭酸ガスレーザー:小腫瘤などを蒸散したり、ニキビの膿瘍の小切開など、非接触性のため器具の消毒が必要なく簡便に使用することができあると便利。しかし作用は基本的には電メスと同じ。治療後発赤が数ヶ月続く。
    ダイオードレーザー:様々な波長のものがあり、主に脱毛用として使用されているが最近では、皮膚の若返り用のものもでている。
  4. 4. シワ用注入物(filler)
    従来からの牛コラーゲン、最近出現したヒアルロン酸、ポリアクロラマイド系のものなどがある。最近はヒアルロン酸の人気が高い。牛コラーゲンは遅延型アレルギー反応の発現を避けるために、一ヶ月間のテストが必須。ポリアクロラマイド系の注入物は吸収されることがないとしているが後日異物肉芽反応が出現する(約10%)ことがあり訴訟につながる恐れがあるので使用しないほうがいい。注入物は他に隆鼻術などシリコン挿入の代替としてや、老齢に伴う顔面組織の萎縮を補う方法としても重用されている。
  5. 5. 筋肉麻痺剤・ボトックス注射
    美容用に承認されてはいないが、off label使用として輸入援助会社などの手を借りて医師個人の輸入で盛んに使用されている。世界中で使用されているが特に重篤な副作用などは報告されていない。表情筋の働きを弱めシワが出来にくくするために使用する。皮膚にシワのくせが既に刻み込まれている場合には、ヒアルロン酸を併用する。持続効果は約半年と説明しているがそれ以上に継続するらしく、通常1年に1回程度注射に訪れる人が多い。ボトックス注射はその他に、廃用性萎縮により筋肥大を矯正する作用もあるため、エラの張った人の咬筋に注射して顎の形を整えたり小顔効果を得ることにも使用されている。
  6. 6. RF(Radio frequency,ラジオ波)
    電気メスの原理を応用し、皮膚表面には熱傷を起こさずに、真皮または皮下脂肪層に発熱を誘発しtrabeculaeのコラーゲン線維の拘縮を起こさせたり、脂肪の萎縮をもたらしたりさせる作用を有する。電気メスと同様にモノポーラーとバイポーラーのものがあり、それぞれ工夫して皮膚冷却装置を組み込んで表皮を保護している。皮膚組織の長さの約1〜3%の皮膚引き締め効果(skin tightening)が得られるとされ、線維芽細胞による引っ張りとコラーゲン線維の増殖を待つために効果の発現には2〜6ヶ月を要するが、もともと皮膚がlooseな人とややtightな人では効果は大きく異なり個人差も大きい。RFとレーザーを組み合わせて照射する機器もある。 この治療法はface lift手術をある程度代替するものではあるが、究極的な効果を望む場合にはface lift手術を受ける必要がある。皮膚に熱を加えるとtightening効果が得られるために、このほかに、赤外線や、超音波を工夫して照射する方法も発表されて今後の比較研究が待たれる。
  7. 7. 特殊埋没糸皮膚組織牽引法、(APTOS糸 商標登録名)
    2-0程度の太さのポリプロピレン糸表面の両端に反対方向に斜めの刻み目を有刺鉄線のようにつけ、顔面皮下組織中に通して使用する。組織を摘み上げて離すと糸の刻み目に皮下組織が引っかかり摘み上げた状態を保つという原理を利用する方法。上方に引き上げればたるんだ皮膚の牽引にもなる。刻み目を入れた糸を購入して使用するが、自分でメス刃などで刻み目をいれて作ることも出来る。軽く任意の方向に摘み上げたり、引き上げたりすることが出来るので、限界はあるがface lift手術の代替ともなる。1〜2年は効果が持続する。糸の周囲組織には結合組織が造成して外れにくくなる。 施術後、様々な理由で除去を希望する場合があり,小切開より除去可能。
  8. 8. その他これから人気の出そうなnonabrativeな治療法
    • UVB光線による線状瘢痕の色素脱失、肉われ線などをめだたなくする治療。UVB発生装置を使用し、瘢痕部のみに限定して照射し日焼け現象を起こさせることにより、瘢痕を目立たなくする方法。形成手術以上の結果を望む場合には、試みる価値がある。半年から1年ほどで日焼けが褪めたらまた追加治療する必要がある。
    • ● PDT(Photo Dynamic Therapy)によるニキビ治療
      これまで健康保険によるニキビの治療法は30年間基本的な変化が見られず、皮膚科に行っても大してよくならないという評判が定着していたが、最近欧米の機器を使用した新しい治療法が紹介され始めて好結果が得られるようになってきた。最近注目を浴びているものの一つが5-aminolaevulinic acid (ALA)を利用した方法である。服用させ、脂腺に集積されたALAに特異吸収光線を照射し活性酸素を発生させ、その作用により脂腺を部分破壊しニキビの治療を行う方法である。伊藤嘉恭ら(. Archives of Dermatology. Sep 2000.Vol.136; 1093)によって研究が進められてきたものの、ALAは日光過敏性があるために後日、発赤、色素沈着などの合併症のため普及が遅れていたが、欧米の会社が表面塗布用の製品を開発し、臨床応用したところニキビに著効を示し、更に皮膚の若返り効果も強調されたと報告されブームとなっている。しかも、特殊な照射装置を必要とせず、手持ちの色素レーザー、IPLなどで間に合うということになり、ブームに拍車がかかっている。我々も試用してみたが、治療後に軽い発赤と浮腫、色素沈着が起こり回復に時間を要するため、美容目的に使用するのは適当ではないとの印象を得ている。したがって、本邦においては、膿庖性、集ぞく性座そうなどには著効を示し適応があるものの、軽度、中等度のものではIPL,レーザー照射などで比較的簡単に寛解するので、ALAを使用する必要はないと考えている。 最近では、弱いダイオードレーザー光の定期的な照射によりニキビの発症を抑制する可能性の研究も進められている。
    • ● Mesotherapy
      最近ヨーロッパで流行している治療法で、これまでは表面に塗布したりイオントフォレーシス(電気泳動)などで浸透させていた、希釈したVitC, コラーゲン、ヒアルロン酸などを、真皮中に直接細い注射針で注入する方法である。皮膚中に極少量づつ無数に注入する。注入後の皮膚の張りなどの短期的な結果は浮腫とあまり見分けがつかない程度のものであったが、注入液を工夫したりすれば長期的には何らかの好結果が期待されるのではないかとの印象が得られた。注入用の電動式特殊注射器も既に販売されている。
    • ● 注射による脂肪除去
      Phosphatidylcholineを脂肪中に注射すると、脂肪・脂質の代謝が昂進するという。通常は動脈硬化のplaqueや高脂血症の治療に使用されている。Agingにより顕在化する下眼瞼部の脂肪組織を注射のみで減少させる治療に使用することもできるという。ブラジル、米国などでは臨床報告がなされ、すでに美容外科医に一般的に使用されつつある。手術によるcomplicationや術後のdowntimeなしに比較的好結果が得られるので、本邦においても遅からず広まる可能性がある。
    • ● その他の治療法、ケミカルピーリング・VitC導入等
      最近、皮膚科医の間で盛んに取り入れられつつあるが、現在のケミカルピーリング法は表皮部分のみに作用する程度の軽い方法が主流を占めています。欧米で施行されているものはもっと真皮中に作用するほど強力で発赤が1ヶ月程度は持続し、むしろそれぐらいの反応が見られなければ効果はでないとされています。しかし東洋人には炎症後色素沈着、肥厚性瘢痕の形成などの可能性が高く、強いピーリングは美容目的には妥当性がないと考えている。我々もニキビ治療の補助手段としては使用している。

■ おわりに

しみ、しわ、くすみ、張りなどのいわゆる皮膚若返り療法の効果を総体的に考察し施行による満足度を100点満点の点数制で採点してみると、私見ではあるがIPLが30点、レーザー5点、RF20点、Filler30点、ボトックス30点、ケミカルピーリング等1〜3点ということになる。したがって、患者さんのご要望より、これらの治療を組み合わせて積み上げることによって、できるだけ満足度をあげていく総合的治療法を行うことになる。