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東京女子医大附属青山女性医療研究所美容医療科 教授 若松信吾
最近、私は美容外科クリニックを全国展開していて、テレビのコマーシャルでもしょっちゅう出てくる、某有名美容外科のご子息の結婚式に招待され出席しました。招待状にはご子息2名の合同結婚式であること、業界では誰でも知っている有名外国美容外科医数人、芸能人その他著名人多数が出席するので先生も是非いらしてくださいと誠意のこもった言葉でしたためてありました。会場はTホテルで最大の1000人は入れるかとみえる披露宴会場です。なにしろそのちょっと前には、にせ有栖川の宮の結婚式という芸能人や政治家を巻き込んだ披露宴詐欺がテレビで連日面白おかしく報道されていた時期とも重なり、まさかかつがれているのではとの、疑念もちらりと脳裏をよぎったが出掛けたのでした。会場につくなり顔見知りの先生方も見えるし、懸念はすぐに胡散しました。上席に案内されて、型の如くに披露宴が始まり新郎新婦と家族の紹介があって非常に驚いたことがあったので、美容医療を志す若い皆様の参考になればと思いこの文を書いているのです。
驚いたこととは、二人とも医師であるその立派なご子息は、既にそれぞれ某有名医科大学の形成外科の研修医として専門医への道を着々と歩んでおられること、しかもそれぞれの新婦も形成外科の医師、皮膚科の医師として正規のトレーニングコースにのり研鑽に励んでおられることが紹介されたことでありました。あのコマーシャルに出てくる派手なアクションの先生の息子さんなのだから、スチュワーデスやファッションモデルと結婚するのではなかったのかという予想を裏切られた思いはさておき、新郎新婦4人とも堅実に大学の医局で勉強していたのは大変な驚きでした。 なぜなら、このところ美容外科のチェーン展開をしている先生方は、みな超多忙で、つねひごろ美容外科では自分たちが最先端であり経験も豊富なのだから大学に入局するのは時間の無駄である、卒業したら我々のところに直ぐに就職してくれればいろいろ教えてやると言っていたではなかったのかと。私も医学部6年生の学生から“どこの美容外科に就職したら一番有利か”とのまじめな相談をちょくちょく受けます。地方の国立大学で、親が医者ではなく自営業、サラリーマンで医療界は親戚中で初めての自慢の子女であることが多いのです。折角の才能と投資をできるだけ早く最大限に回収したいとの切実な希望はよくわかります。医療界の事情を知らない親戚のおじさんなどから、大学の形成外科の若い医局員に“新ちゃん、医者になったんだって、それも美容整形やっているちゅうじゃないか。それで今、いくらかせいでいるんだ。”などと聞かれ、“月収25万円くらいです”などと答えようものなら、“そんなことないだろう、うそだろう”などといわれ、すぐに形成外科の医局をやめ、市中の美容外科に就職しようかと真剣に悩んだことのある大学の若い医局員を数多く知っています。一方、医療関係者の親はこんなことはありません。若いときの厳しい修行としつけがその後の長い人生にとっては応用が利き一番の強みとなることは自分の経験から良くわかっていて、お金もその結果として自然についてくるものだということも知っているからです。勿論、このご時世ですから、競争の激しい美容医療を生業(なりわい)とするには、医学的な基礎知識の習得と同時に、経営的センスを研ぎ澄ます必要があることはいうまでもありません。
広告規制が厳しい医療界で、最近専門医であることを宣伝してもいいとの規制緩和がなされました。現在、広告することができるいわゆる「専門医資格」を付与する団体は、美容医療関係では、日本皮膚科学会の皮膚科専門医、日本形成外科学会の形成外科専門医のみです。若い諸君はひとまずこれらを標榜する教育病院(殆どは大学病院関係)にて修行を重ねる必要があります。美容外科という厚生労働省で認可された診療標榜科があり、学会もありますがまだ専門医資格として厚生労働省から認可されていません。日本美容外科学会の正会員になるには、形成外科の専門医資格の取得が条件となっています。日本美容皮膚科学会というのも最近立ち上がりましたが、これは皮膚科の先生が専ら中心のようです。将来的には正会員となるには皮膚科の専門医資格が必要となるでしょう。
私見ですが、形成外科だけでも、皮膚科だけでも現在のめまぐるしく変わる世界と患者さまのニーズの変遷には応えることはできません。創傷治癒の豊富な知識、皮膚縫合等の上手な外科技術、軟膏、レーザー、更年期医療その他が統合された新知識が必要となってきました。 これは現在の皮膚科や、形成外科だけを修行しても得られないものです。将来的には、外科系各科の専門医資格取得後に更に2〜3年美容医療を修行し旅立つのがベストだと考えています。時代の要請は皮膚科でもなく、美容外科でもなく美容医療科です。現在は美容医療科というものは存在しませんが、諸行無常の世の中です、将来は若い諸君の力を結集して制度を変革したらいかがでしょうか。